AIを使えば作業が早くなる。そう信じて、情報をどばっと渡して「良い感じにして!」と頼んだ経験はないだろうか。
特にAIを使い始めた頃にやりがちなのは、
あたりなのだが、具体的な指示なく「良い感じにして!」と投げると、細部の整合性が崩れて内容が薄い「それっぽいもの」が出てくる。厄介なのは「何もかもがダメ」な出力より、パッと見は良さそうにに見えるものが出てくるところだ。そこで下手に「良いところは残しながら直そう」と手を入れ始めると、ぐちゃぐちゃの結末を迎えることとなる。
では、AIをどう使えばいいのか。個人的な経験をもとに、困り別のユースケースを簡単に紹介したい。
まずは「自分が何をしたらいいか分からなくて困っています」と正直に相談する。その際、どんな状況で何に困っているのか、どんな状態を最終ゴールとしたいかをなるべく具体的に書く。そのうえで、「この最終ゴールの認識の妥当性にも自信がないので、忌憚のない意見ください」とも言っておく。
そうすると「こんな感じにするとええんちゃいますか」「こういうゴールがええんとちゃいますか」という返事が返ってくる。
しかし、それをすぐに鵜呑みにしてはいけない。
返ってきた内容をさらに分解して、自分が本当に理解できる・実践できる粒度まで具体化させる。ここが肝で、とにかく120%、腹の底から「何をすればいいか分かる」レベルまでAIに具体化させるといい。
迷走とは、ほとんどの場合、自分が何をしたらいいのか本当の意味では分かっていないときである。案外、人は自分の考えていることをそれほど正しく理解していないことも多い。そんなとき、AIはゴールを定め、道筋を決めるのに非常に役立つ。
これは2パターンある。ひとつは「予想している仮説があるが、データが多すぎて何からどう手を付けて良いか分からない」とき。もうひとつは「そもそも仮説の想像が組み立てられず、何でもいいから手掛かりが欲しい」ときだ。
前者の場合は、分析の目的と自分の考えを前提から主張までテキストにまとめたうえで、「全体の傾向を集計・分析し、この仮説を支えるデータと反するデータをそれぞれ出して」と依頼するといい。書き手の意図を把握したAIは、分析だけでなくデータの解釈可能性までフラットな視点で返してくれるので、考えをさらにまとめやすくなる。
後者の場合は①と同じで、まずは何に困っていて、このデータはどんな調査から得られたものなのかを伝える。そのうえで、これを使ってどんな示唆が導けそうか、最終ゴールに対してデータを活用するにはどうしたらいいかを聞いてみる。
この時点では分析結果を返させるのではなく、活用の仕方や効果的な分析方法の提案にとどめておくのがポイントだ。返ってきた回答を見て筋が良さそうなものを選び、その方法で分析すると、最初よりは方向性が見えてくるはずである。
それでもまだやりたいことがぼんやりしている場合は、あえて意地悪に「でもこの分析って何の役に立つの?」とAIに聞き返してみるといい。これを繰り返していくと、自分が何をしたいかを決めやすくなる。
資料作成は、AIに任せたい業務の筆頭である。特にボリュームが多いと情報整理や指示出しも煩雑になるため、「良い感じにして」と丸投げしたくなる気持ちはよくわかる。
しかし面倒だからこそ、情報の分割と具体的な指示が、アウトプットの質を決める。
まずは骨子作りから。全体でどの程度のボリュームで、最終ゴールを何とした資料にしたいかを伝え、大きな枠を作らせる。その骨格が自分の伝えたいことを伝えるに過不足がないかをチェックし、必要に応じてさらに細かい調整依頼を投げる。できれば1章につき複数のトピックレベルまで分解した枠にしたほうが後々が楽だが、その余裕がなければ章立てだけでも構わない。骨子を突き詰めすぎるとかえって全体のバランスが狂い始めるので、ほどほどに。
調整した骨子をもとに新しい会話を開始し、資料の目的をあらためて伝えたうえで、まずは第1章の骨子をさらに細かいトピックに分類し、スライド1枚レベルまで落とし込む。その際、ワンメッセージワンスライドを徹底する。これを章ごとに異なるの会話を立ち上げて行い、最後に統合して過不足を調整する。
AIはゼロから完成品を作るより、人間が設計した構造を肉付けする方が得意だ。この下準備をしておくと資料化がかなり楽になるし、中身が薄く整合性の取れないものが出てくる確率はかなり下がる。
AIを使うにはやはり、自分のやりたいことがはっきりしていないと難しい。一番良くないAIの使い方は、自分の意思を持たないまま、意思の生成そのものをAIに委ねようとすることだ。これをしてしまうと、アウトプットの質を判断できず、「それっぽいけど全然ダメ」なものを作り続けるはめになる
何をしたらいいのか分からないなら、まずAIに相談してゴールを決め、焦らずに小さいなところから、自分が「分かる」、自分が「こうしたい」と言えるところまで具体化する。この小さな積み重ねこそが、AIとの付き合いにおいて重要である。
「良い感じにして」と丸投げしたくなったときこそ、まずは自分で自分を問い直すところから始める——そのことを忘れないでおきたい。